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岩堀美雪さん 自分大好き、友だち大好き、家族大好きをつづって心を育てる

小学校で、自分の大切なものをファイルする「パーソナルポートフォリオ」を使って実践する岩堀さん。想像していたよりはるかにめざましい成長をとげる子どもたちに、改めて感動する熱血先生。
日本中にこんな先生がいたら学校にいじめはなくなり、将来、この国はもっと平和になるのに…。現在、世界の貧困層の子どもたちを支援する「ありがとう 地球プロジェクト」を計画中といいます。

自分大好き、友だち大好き、家族大好きをつづって心を育てる

岩堀美雪さん×中西研二

岩堀美雪(いわぼり・みゆき)●福井県鯖江市立待小学校教員。
2000年秋「パーソナルポートフォリオ」に出会い実践。日本中の子どもたちに『自信、思いやり、やる気』を持ってほしいと願い、実践記録を『心がぐん!と育つパーソナルポートフォリオ』として自費出版。また実践の模様を『日刊 中・高講師用ニュースマガジン』で執筆し、合わせて2001年、2002年の夏の「霧島プロジェクト」で発表。
2005年2月25日、NHK北陸スペシャル(25分番組)「ファイルで見つける自分の長所」で放映。2006年8月4日、NHK福井夏季特集(30分番組)『自分大好き 友だち大好き 〜服間小5年生の宝物』として放送。現在、教師として、また講演、テレビなどで活躍。

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。ヒーラー。ワンネスディクシャインストラクター。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来15年間で18万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』(共にVOICE刊)がある。

どの子も素晴らしい可能性を持っている

中西 ミネハハさんが歌っていらっしゃるあなたのCDに感動して、ぜひお会いしたいと思っていました。そしたら「パーソナルポートフォリオ」というものを使って子どもの心を育てる教育をされていることを知り、子どもたちがどのように変わったのかもお聞きしたいと思いまして…。

岩堀 ありがとうございます。「パーソナルポートフォリオ」というのは子どもたちそれぞれが持っているファイルに自分の大切なものを記録として残していくものですが、一番最初のページに、これは、私が一番伝えたい「自分を大好きになろう。友だちや家族のことも大好きになろう」と書くようにしています。その他に、基本的には自由に書いていいのですが、その中で全員が一緒に活動することが三つあります。

一つ目は「自分のいいところについて考える」。
二つ目が「友だち同士でいいところを書き合おう」。
三つ目が「(家族の方に)お子さんのいいところを書いてください」

というものです。

中西 この「パーソナルポートフォリオ」を使おうと思ったきっかけはなんですか。

岩堀 私は教師になって24年になるのですが、これまでに接してきた大勢の子どもたちから教えてもらうことばかりでした。その中で二つだけ挙げると、「どの子も素晴らしい可能性を持っている」と「どんな子も必ず素晴らしいところがある」ということです。

私はつねづね学校の勉強も大事だけれど、やっぱり心が育っていくことが大事だと考えていますので、たとえば勉強はそれほど得意じゃないけど、友だちが熱を出して保健室で休んでいると、側につきそって「大丈夫?」と心配し励ましてあげるとか、給食のお盆をひっくり返してしまった子がいれば、一緒に落ちて散乱した食べ物を拾ってあげる子などを見てきたのですよ。

そのような純粋で優しい子どもたちが、中学に進学するとたちまち学力主義の波に飲み込まれてしまう。そういう子どもたちに「あなたたちには学力だけでは計りきれない素晴らしいところがあるのよ。そのことを自分の心の中で認めてあげてね。自分のことを大好きでいてね。そして、どうか真っ直ぐに育ってね」という送り出す者の気持ちなのですが、そういう気持ちを子どもたちに伝えるのに、それまでは通知票や日記のコメントなどでしか方法を知らなかったのです。

岩堀美雪さん

当時、総合学習というのがあって、「ポートフォリオ」をその時間に使おうといろいろ調べたら、ある本の片隅に「ポートフォリオの種類」として「自分が頑張ったマラソンや縄跳びのカード」「友だちからもらって大切にしている手紙」「きれいだと思って拾っておいた落ち葉」などをファイルし、あとで自分のやったことを振り返ることで自分を好きになることにつながる―と書いてあったんです。

その一文を読んだ瞬間、「これだ!」と思いました。これを使えば、私が教師として長い間願っていたことが実現すると思ったんです。それは「学力だけでなく心が育っていくこと。自分のことも好きになって友だち、家族のことも好きになっていく」ということを形として残せるのです。

始めたころは試行錯誤で、『心がぐん!と育つパーソナルポートフォリオ』はそのときのことをまとめた自費出版本です。、現場の教師が実践したものをまとめた本というのはおそらく全国でもこれ一冊だけだと思います。

自信をつけたときの子どものパワーはすごい!

中西 子どもたちはどう変わったんですか?

岩堀 まず自信をつけたときの子どものパワーはすごいと思いました。ある男の子は授業中に一日20回ぐらい、教壇にいる私のところまで駆け寄ってきて「つぎは三番の問題をノートに書くんだよね」といちいち確認にくるような子でした。自信がなかったのですね。

最初に「自分のいいところを書こう」と言ったときに、彼は20分考えてたった一行「物を大切にする」と小さい字で書いたのです。ところが、友だちに「足がけっこう速い」と書いてもらったんです。その子の走るレベルは中の上ぐらいでしたが、それからは学校全体でやる「5分間走」というのに誰よりも頑張りだしたんです。夏になっても猛暑の中を汗を流しながら一回も手を抜かずに頑張って、六年生になったら持久走の選手に選ばれ、ついに他校との連合体育大会で優勝するまでになったのです。

中西 それはすごい!

岩堀 卒業のときに、おばあちゃんから「小学校へ入学の当時は毎日泣いてばかりで、六年間通えるのだろうかと心配していましたが、今では『肩が痛いんなら叩いてやるわ』といってこちらを心配してくれるまでになりました。ありがとうございました」とお便りを頂きました。

ある女の子のこんな例があります。初めての家庭訪問で、自営業のお父さんがその子を横にして「先生、こいつはバカなんでね」と言われたのです。私はびっくりして、初対面であるにもかかわらず「何を言うんですか。この子は生まれてから10年しかたっていないんですよ。どんな可能性だってあるんですよ!」と怒ったんです。

その子は算数が苦手だったので友だちの答えを写しては、その場しのぎですませていたのですね。あるとき、子どもたちに「勉強できないのは誰のせいだと思っているの?」と聞いたんです。すると「授業を聞いていない自分が悪い」「家で勉強しない自分が悪い」と、みな自分が悪いと言うんですね。そこで「それは違うよ。先生のせいだよ」と言ったんです。

これは私がずっと言い続けていることですが、「教員は分からない子が分かるようになるまで教えるのが仕事。分からない子がいるということは、先生の教え方が悪いからだよ。だから自分をせめなくていいよ。そのかわり、分からないことがあったら正直に『分からない』って先生に教えてくれないかな」と。その子が最後の最後まで「分かりません」と言えるようになるまで一年ぐらいかかりました。

その子が五年生になって徐々に算数の成績が良くなって、友だちから「算数をすすんで勉強するようになった」と書いてもらうと勉強にものすごい拍車がかかって、テスト前には20ページも勉強してくるようになったんです。結局平均点が93点になって、一番喜ばれたのがお父さんでしたね。

中西 そうでしょうね。先生も素晴らしいが、子どもたちも素晴らしい。

岩堀 これは親御さんが子どもに教えられた例です。その方はお子さんに「私のいいところ書いて」と言われて、「あんたのいいところ、一つもない」と吐き捨てるように言ったところ「私のいいところ一つもないの?」と言って大泣きされたそうです。

お母さんからみたら勝手気ままでわがままで、いいところなど思いつかなかったそうです。ところが、友だちが「明るくて、元気で、笑顔がいい」と書いてくれたのです。それを見てお母さんは「親としてこれではあかん」と家族会議を開いて家族全員で手分けしてわが子の「いいところ」を書き出したそうです。「おかげで、親として気づかせていただいた」ということでした。その後、その子は家庭内で反抗することがなくなったそうです。家族のみんなに認められて、家庭内に居場所ができたんですね。存在欲が満たされて気持ちが落ち着いたので、お姉さんたちと比べて対抗する必要がなくなったのでしょう。

「あなたがお母さんの子どもであることが一番いい」

『心がぐん!と育つパーソナルポートフォリオ』と『ありがとう地球』

大好評の本『心がぐん!と育つパーソナルポートフォリオ』と天の啓示のようにつながったミネハハさんとの奇跡的なコラボレーションでできたCD『ありがとう地球』。JOYヒーリングの会場ではいつも感動の涙が溢れて…。

岩堀 これも家族が見た「いいところ」で、10項目書かれていて、最後に「あなたがお母さんの子どもであることが一番いいところです」と書かれていたのです。それを見て、私は朝から教室で大泣きしてしまいました。私も二児の母ですが、このことだけは子どもに伝えてから死にたいと思う言葉ですね。

もう一つ、忘れられないエピソードがあります。子どもの言葉によって親が変わったんですね。ある六年生の女の子のお父さんの話ですが、その方は保護者会のたびに、ご自分のお子さんをのぞき込むようにして、まるで目に入れても痛くないような可愛がりようでした。

ある保護者会のとき、「家族のいいところ」を書くときに、その子はお父さんのことだけ書いていなかったんです。そこで、「たった一言でいいから、お父さんのことも書いてあげたら喜ぶだろうな」と勧めると「エッ!」と言って後ろを振り向きお父さんを見ていました。この年ごろの女の子は、父親を遠ざけたいのですね。

その後、お母さんから「あれは天からの贈り物でした。先生が勧めてくださったんでしょう?」と話してくださいました。その子はたった一言「お父さんは仕事を頑張っている」と書かれていたそうです。それを見てお父さんが号泣されたそうです。自営業のこの方は不況で仕事をやめようと思っていたそうです。そんなときのこの一言が勇気を与えてくれたのでしょうね。もう一度仕事を頑張ってみる、と言われたそうです。「この言葉に救われました」とおっしゃっていました。

中西 そのエネルギーはすごいですね。私もヒーリングやセミナーをやっていて思うことは、子どものころのトラウマが消えない大人が多いのです。6歳ぐらいまでに性格が決まってしまうので、両親から受けた傷は大きいわけです。それはまた、病気にもつながってくるわけですね。

ではどうしたらいいのか、ということになりますが、人間はみなエゴイストで、そういう人が何を欲しているかというと「愛されたい」「認められたい」「ほめられたい」のです。それが満たされているときに、人は喜びを感じるわけでしょ?

だからつねにそれが満たされている状態を親は与えなければいけないのですが、親もまた完全な教育を受けていないわけで、結局、その上の親にされたとおりにしかできないんですね。その連続の中で人間関係がおきているんですが、先生が今言われた子どもの変化は十分あり得ることですね。だって三大欲求が全部このプログラムの中に入っているんですから。

今は生きがいのない子、何をしていいか分からない子が増えていませんか。

岩堀 増えていますね。

ケビンこと中西研二

中西 好きなことが見つからないで、ひどくなると精神障害まで起こしている人が増えていますね。結局、原因の一つは、競争社会の中でつねに相手と自分の比較だけの世界で、相手はどうなんだということばかりが気になるからですね。心がとてもアンバランスになってしまっている。そういう意味で岩堀さんの「パーソナルポートフォリオ」はすごくバランスが取れている。自分も見られる。相手も見られる。しかもクラス中を見る。そして自分の一番したいこと、好きなことを言葉で残す。これはすごい!これは教育革命ですよ。

岩堀 ありがとうございます。

中西 子どもたちがみんなこのような教育を受けたら世の中は絶対平和になりますね。

「あなたはあなたのままでいい」

岩堀 この本の出版に当たっては、なかなか理解されないでたいへんでしたが、大親友を亡くし、悲しみに暮れているときにふと思ったんです。「人はいつか死ぬ。彼女は天に召されたけど自分はまだ残っている。残された者は本当に大事だと思うことをやり遂げなければ…」と。24年間教員をやってきて「勉強も大事だけど、心が育っていくこと」「自分が自分のことを認めて、自分が大好きと思い、お互いが認め合っていくことが大事や」と私の魂が叫んでいたんです。

中西 それで、その後この本はどうなったんですか?

岩堀 世の中が学力時代でこの本がほとんど売れないときに、2006年に福岡でいじめにより自殺した中学生の悲しい事件がありました。涙が止まらなくて心理学の本をいろいろ読んでみましたら、その中に「人は生存欲求より所属欲求が強い」とありました。クラスという集団の中で、いじめられて自分の居場所を確保するのが絶望的になったときに子どもは死を選ぶ、とありました。

その同じ本の中に「人の心が健康であることの最大の要因は自分のことを好きになること」とありました。それを読んだときに今こそ自分のやってきたことが役に立つ、と思いました。それで、このことをもっと積極的に広めたいと思い自主研修会を開いたり、テレビに呼ばれてコメントしたりして不思議にも思いがけない広がりを見せてきたのです。

中西 こんな素敵なことを実際に小学校で実践している方がいるなんて、日本もまだまだ捨てたものではないなと思いました(笑)。

私もセミナーで非常に近いものをやっていますが、結局、心と体は密接に関係しているわけですから、「あなたはあなたのままでいい」「あなたは十分素敵だ」ということがとても大事なんですね。

先生の実践されていることのすごいところは、「あなたは素敵!」ということをクラス全員、家族全員が教えてくれるところですね。こういう子どもたちだったら病気になりようがない。先生のクラスの子は学校が楽しくてしょうがないでしょうね。

岩堀 休む子、いないですね。

中西 遅刻もしないでしょう?

岩堀 ないですね。

中西 ほらね。不登校児もいないでしょ?

岩堀 いないですね。

中西 そんな学級が今時あるなんて!もっとこのことをアピールしなければ…。今日は素晴らしいお話をありがとうございました。

「いやしの村だより」2008年5月号掲載

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