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対談:坂本小百合さん×中西研二『動物との触れ合いは「生きている」を感じること』

2005年に公開された映画『星になった少年』の主人公・哲夢君は21歳の若さでこの世を去り、短い生涯を全力で生きたストーリーは多くの反響を呼びました。哲夢君の母であり、原作『ちび象ランディと星になった少年』の著者である坂本小百合さんは、今でも『市原ぞうの国』の園長をされるキャリアウーマンです。彼女の放つ明るさとパワーの源は、動物に対する深い愛情と、「命」の尊さを常に感じているからではないでしょうか。

動物との触れ合いは「生きている」を感じること

坂本小百合さん×中西研二

坂本小百合(さかもと・さゆり)●「市原ぞうの国」園長。1949年横浜生まれ、モデルとして活躍後、動物プロダクションを経営。89年に千葉県市原市に私設動物園を開園、その後96年にゾウさんに乗れる動物園「市原ぞうの国」と改称し、動物とのふれあいを大切にした動物園創りをしている。
市原ぞうの国ホームページ
http://www.zounokuni.com/

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。ヒーラー。ワンネストレーナー。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来17年間で20万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。

自分が面白くなくちゃ人を楽しませることはできない!

中西 映画「星になった少年」を観ましたが、象への深い愛情と哲夢少年の純粋さには感動しました。

今回こういうご縁をいただいてすごくワクワクしています。哲夢くんが最初に触れ合った象のミッキーはまだいるんですよね。

坂本 息子が小学校4年生の時にやってきましたがいまでも元気にしていますよ。象たちに伝えたいことはミッキーに言えば他の象たちに伝わるんです。特に象は母系家族で雌を中心にした群れを形成しているから一番長老のミッキーの言うことをよく聞きくんですね。ミッキーは日本語、英語、タイ語、象語がわかりますから。

中西 それはすごい! 哲夢くんはミッキーやその後にきた象と深い交流を交わして単身タイに象使いの勉強に行かれた。それが12歳のときなんですよね。

坂本 そうです。その当時は千葉の東金市に動物プロダクションとしての飼育場があるだけでしたけど、14歳のときに帰国して現在の動物園(市原ぞうの国)をオープンしたのが彼が高校1年生のとき。それからは哲夢が頑張ってくれたこともあって、プロダクションだけでなく動物園としても出来上がってきました。もともと象にとっての快適な場所作りと、他の動物たちにとっても大自然の心地よさを、ということでオープンしたので…。

中西 動物プロダクションとしても先駆けですよね。でも今は動物園にシフトしているわけですか。

坂本小百合さんの著書(右)『ゾウが泣いた日』祥伝社刊(左)『ちび象ランディと星になった少年』文藝春秋刊

坂本小百合さんの著書
(右)『ゾウが泣いた日』祥伝社刊
(左)『ちび象ランディと星になった少年』文藝春秋刊

坂本 プロダクション部門はまだありますけど、今はCGが主力なので撮影の現場が昔よりもずっと面白くないんですよ。以前はワンカット撮るのに大変苦労して、調教して、撮れたらみんなで拍手ですよ。今は「CGで消せるから大丈夫ですよ」で、あっさりOK。もともとアメリカのテレビドラマ「名犬ラッシー」やディズニーの動物ものを観て育って、それを励みに動物プロダクションを頑張ってきたようなものだからCGの世界は面白くなくて。

自分が面白くなくちゃ人にも楽しさを与えられないと思っていますので、それでだんだん動物園のライブの方に重きを置いてきたというのはあります。やっぱり人と動物が直接触れ合う喜びがライブにはあるんですね。

中西 それで他の動物園にはないような動物との直接の触れ合いが多いライブショーになってきたわけですね。

坂本 うちのショーはリピーターが8割なんですよ。これってすごい数字で、象さんショーの始めに「初めての人〜」って手を挙げてもらうんですけど2〜3割しかいません。ということは2回以上見に来てくれている人がこんなにたくさんいるんだと思うと自分への励みにもなりますよね。

中西 それほどリピーターがいるということは、それだけみなさん楽しんで、幸せな気分になって帰るからでしょうね。

坂本 私はどちらかといえば動物園業界にとって異端児みたいものですけど、やっぱり動物を一番に考えているんですね。動物が幸せでいて、来てくれるお客様も幸せになって、働いている社員も幸せじゃなきゃやっちゃいけない仕事だと思っていますから。

うちの動物たちは、象のショーやふれあいランドなどでも動物のほうからお客様に寄って行くんですよ。お客様のほうも動物と触れて幸せな気持ちになると思いますけど、動物のほうも触られたいから近寄って行くんですよ。触られたくない動物は寄っていきません。だから無理強いはしていないんです。それでお互いがハッピーになれるんです。

 

動物園が伝える「命」の教育

中西 動物と触れ合う機会が最近の子どもは少なくなっていますからね。動物嫌いの子どもも増えてきていますし、犬や猫を飼っているといっても本当の意味での飼い方がわかっているかというとそうでもなくて…。

坂本 バーチャルなものが溢れすぎなんですね。絵本の象さんと違って画面の中の象はたとえCGでも動いているから本物だと思ってしまうんですね。だから昔ライオンとシマウマが抱き合うコマーシャルがありましが、子どもはそういうものだと思ってしまうんです。それに良質な動物番組もあまりありません。

命の尊さを伝える教育というのは日本中の動物園の使命だと思いますよ。本物の自然を教えるにはやはり本物に触って、ぬいぐるみとは違う温かさ、臭いを肌で感じ取ることによって「生きている」ことがなんなのかが伝わると思うんですね。

最近は学校の遠足で初めて動物園に来たという子も多いですよ。私の小さい頃は動物園はもっと身近なもので、家には犬や猫がいて、おじいちゃんもおばあちゃんも一緒に住んで…という環境が当たり前だったけど、今はご飯はコンビニ、夜はゲーム、調べるのはネットという世代です。「生きている」という感覚が身近にないんです。周りが広がっていかない世界の中で自分のことだけを考えていればいいという生活が成り立ってしまうのは、子どもにとってつらいことかもしれないですね。

 

究極の動物園を目指して!

中西 人間の心が育たない環境ですよね。そこから生まれる思いやりといった感情が育ちにくいんですよ。だからここの動物園には動物と直接触れ合う企画がたくさんあるんです。

坂本 なるべく動物との距離を少なくしようとは考えています。いまこの施設(市原ぞうの国)の隣に新しい、究極の動物園を作ろうと建設中なんです。

中西 それは興味がありますね。どんな動物園にする予定なんですか?

坂本 動物が園内を自由に歩きまわっている動物園です。カピバラやらワラビーや鳥が自由に散策しているので、もし動物がお嫌いな方がいれば入園して真っ先に人間用の柵に入ってください(笑)。動物が近寄らない場所から動物たちを見学できますから。それからすごく素敵な庭を造って、園内は常時100人を超えないように制限するつもりです。園内ではゆったりしてもらいたんです。庭に座っていると動物が自然と近づいてくる…というような究極の癒しの空間を作るつもりです。中には宿泊施設も作る予定です。動物園がメインなので多くの方をお泊めすることはできないけど、窓を開けたらキリンがいるような場所を予定しています。

 

来園者の反応は千差万別

「市原ぞうの国」の象たちはみんな元気で愛想良し!たくさん触れ合って楽しいひとときを過ごしました

「市原ぞうの国」の象たちはみんな元気で愛想良し!たくさん触れ合って楽しいひとときを過ごしました

中西 うわー! すごいね!泊まってみたい人はたくさんいるだろうな。泊まらなくてもそんな動物園ならぜひ行ってみたいです。私の孫が動物嫌いなんで連れてきてあげたいです(笑)。

坂本 動物嫌いなんですか?あら、困った(笑)。でもわからないですよ。最初、象を見て怖くて大泣きしているお子さんがいたんですよ。それでもおっかなびっくり象に近寄ってって…。それで帰る頃にもまだ泣いているから聞いてみると、今度は帰りたくないって泣いているんです(笑)。不思議ですよね、子どもって。何かのきっかけでガラリと変わるから。

目の不自由な方が来園された時も、最初はどういうふうにおもてなしすれば楽しんでもらえるのだろうか、と悩んだんですが、まず、本物の象を肌で触っていただいたんです。すると、ご自分の感覚すべてを使って象というものを感じ取っていただけたようでした。知的障害を持った方が来園された時も、そういう方々が持つ独特の純粋さで、象と深い部分での交流があったようでした。

象たちもこういう人にはこういう風に接しようというのがあるみたいで、それぞれに対応が違いますよ。でもやっぱり象というのは大きくて人に衝撃を与えるみたいですね。だから感じるほうも想像を超えた反応をします。

中西 素晴らしいお話ですね。人に夢を与える仕事というのは大変だと思いますが、これからも多くの人に動物たちを通して命の尊さを伝えてください。

今日はお忙しい中ありがとうございました。(合掌)

「いやしの村だより」2010年11月号掲載

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