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田中 優氏×中西研二「一人ひとりの責任で社会の仕組みを変えていく」

あらゆる分野で露呈してきた社会のゆがみ。その仕組みを変えようと環境、経済などさまざまな分野の問題を徹底的に調査・提起し、精力的に発信を続ける田中氏。問題の原因は「日本人特有のあいまいな無責任さにある」と指摘。放射能汚染の問題で多忙を極める一方、日本の森林保護にも取り組み、新たな仕組みを次々に考案し、実践しています。

「一人ひとりの責任で社会の仕組みを変えていく」

田中 優氏×中西研二

田中 優(たなか・ゆう)●1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」 理事長、「日本国際ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院の 非常勤講師。 著書(共著含む)に『地宝論』(子どもの未来社)『原発に頼ら ない社会へ』(武田ランダムハウス『) 幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア(』河出書房新社『)環境教育 善意の落とし穴(』大月書店『)おカネが変われば世界が変わる』( コモンズ『)今すぐ考えよう地球温暖化! 1〜3』(岩崎書 店、子ども向け)『世界から貧しさをなくす30の方法』『おカネで世界を変える30の方法』『天然住宅から社会を変える30の方法』(合同出版)『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』(扶桑社新書)『戦争って、環境問題と関係ないと思ってた』(岩波書店)『非戦』(幻冬社)ほか多数。
田中優さんのブログ:「田中優の'持続する志'」(http://tanakayu.blogspot.com/

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。ヒーラー。ワンネストレーナー。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来18年間で20万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。

にわかベジタリアンをめざせ!

『原発に頼らない社会へ』武田ランダムハウス・刊1,050円(税込)
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『地宝論』子どもの未来社・刊1,575円(税込)
『地宝論』子どもの未来社・刊1,575円(税込)

中西 田中さんのご活躍はあちこちで伺っています。今は福島第一原発の問題に集中していらっしゃいますが、放射能の被害は沈静化しているのでしょうか。

田中 いえいえ、全然!実は今回の放射能汚染レベルはチェルノブイリを上回るレベルなのに、公表されているのはIAEA(国際原子力機関)の委託を受けた原発推進の学者たちのでっち上げのデータで、信用できません。

中西 チェルノブイリのときはそのために約10年間、事故対応が遅れたのですね?

田中 データをうやむやにしてね。それで今回の事故もチェルノブイリよりずっと軽いと思っている人が多いでしょう。

中西 チェルノブイリほどではない、と信じたいのですね。田中先生は汚染対策にはどんなことが必要とお感じですか。

田中 内部被爆への対処ですね。呼吸で体内に吸収される放射性物質の量は食べ物、飲み物から接種する量の5・5倍です。先日、花粉症のマスクでセシウムをほぼ100パーセント防げるという調査結果が出たのですが遅いですよ。当初の汚染レベルは非常に高かったのに、マスクは気休めだと言ってみんなマスクをしないで被爆させられてしまったのです。食べ物に関しては、政府の緩い基準の元では安心できませんが、実際の測定データを見ると、野菜は問題なく食べられます。汚染米も放射能は胚芽の部分に集中しているので、白米にして水で研いで食べれば汚染はゼロです。

中西 ゼロですか!?

田中 そう考えると気にしなければならない食べ物は限られていて、魚、牛乳、きのこ、タケノコ、ブルーベリー、果物類ですね。問題のある食べ物だけ摂らなければいいのに、政府基準が甘すぎるせいで風評被害が起こり、絶望的な気持ちになってしまって解決策が遠のいています。

中西 でも、日本人は魚が好きですからね。

田中 汚染された魚は海流の影響で福島沖と茨城沖に集中していますが、いずれ太平洋に流れてハワイ沖を目指していきます。少し乱流があるので千葉、宮城の辺りの魚も汚染されているかもしれません。淡水魚も、特に鮎は、コケだけを食べますから、汚染度はかなり高いです。とりあえず、にわかベジタリアンになるのがいいですね(笑)。放射線にあたってガンになるときは必ずフリーラジカル反応という酸化反応が起こります。これには体内の酸化を防ぐ抗酸化物質が有効で、ゴマ、緑黄色野菜などを摂っていればガンの進行をかなり防ぐことができます。また食物繊維や炭、ペプチンを摂って放射性物質を体外へ排出しましょう。あとはご機嫌な毎日を送ることですね(笑)。免疫力が高くなりますから…。

 

原発事故は人災

中西 そんなに心配することはないということですね。

田中 心配は十二分にするべきですが、対策をきちんとしていれば対処は可能だということですね。

中西 とりあえず、春までにほとんどの原発は停止になるのですか。

田中 これはストレステストを受けてから再稼働ということで、一時的に止まっているだけです。このストレステストもいい加減なもので、必ずOKが出ます。OKが出ると再稼働します。日本には大きい地震に耐えられる原発は一基もありません。今回の福島第一原発事故の原因も津波で流されたことになっていますが、津波到着前にすでに放射能は流出していたと思われます。だから地震で壊れたのですよ。それを言ってしまうと原発を全部止めなければならなくなるから、津波のせいにして誤魔化しているのです。公表された津波の高さも「千年に一度の地震」も大ウソです。ですから、今回の事故はあきらかに人災ですよ。

中西 なんとかウソでクリアしようとする発想ですね。まれにしか起きない津波だったので仕方ないと…。

田中 だけど地震の方は彼らの思うとおりに動いてくれないから、また次の事故が起きるでしょう。

中西 そうすると、日本の地震対策も真面目にやらないと、原発がある限り危険ですね。

田中 そうなんです。今回、東京電力は「除染のお手伝いします」と、まるで当事者意識がありません。国のほうも「電力会社が不始末をおかしたから」というスタンスです。じゃあ、原発事故って一体誰が起こしたの? と言いたくなるのですが、日本はこういう無責任な体制をみんなで作って走り続けてきたのです。こういう態度が改まらない限り、これからもあらゆるところで人災が起きるでしょう。

中西 今の若者は、日本の未来をどうとらえているのでしょうね。

田中 あるがままに流されるようにしていたら、それは間違いなく駄目でしょう。結局、それは無責任に生きているという日本人の典型的な生き方ですから、もっと意思的な人が出てこないと…。

 

社会の仕組みを変える

中西 では、原発は止まるのでしょうか。

田中 止まらない可能性のほうが高いですよね。なぜなら、そこに儲かる仕組みがあるからです。銀行、テレビ業界、ゼネコンは儲かるグループでお互いが支え合っていますから「原子力事業は永遠に不滅」です(笑)。だからその儲かる仕組みを問題にしなければいけません。

中西 こういう問題を国会の場で論議できないのですか?

田中 今回の事故で、私がその仕組みに気付いて発言したら、利権に絡んでいない国会議員が「それは問題だ」と言ってくれています。可能性は低いのですがこういう方々が多くなり、国会でムーブメントになってくれるといいですね。

中西 その仕組みを理解し、みんなで動かないと無理ですね。利益至上主義では世の中は良くなりませんから。

 

お金のいらない社会へ

田中 利益至上主義をやりすぎて機械化した結果、高失業率につながってしまった。今、大卒の就職率は59パーセントです。社会全体の仕組みが間違ってしまったのです。だからその仕組みを改める方向にいくしかない。

私自身が目指しているのは、お金に頼らなくても暮らしていける仕組みです。フィンランドではすでにあまりお金のいらない社会に近づいていて、教育費は大学まで無料、医療費もゼロ、住宅は売るときは高く売れますからリスクが少ない。だからあまりお金がなくても生きていけるのです。

そういう社会になると面白いことに、みんなお金を払いたがります。電車賃は車内の自販機で払うのでいくらでも無賃乗車できるのに、彼らは真面目にお金を払うのです。それが社会参加でもあるからです。だから生活保護を受けている人も納税します。人間として生きていくために納税の義務から始めていく。

そうなると、例えば就職できなかったからといって自殺する必要がないでしょう。最新の警察庁の白書(平成22年「自殺の概要資料」)の中に「就活自殺」という項目が加わりました。日本人の20代の自殺率は世界でいちばん高いです。われわれはお金がないと絶望して生きられない社会を作ってしまったということですね。日本では自ら主体的に生きるということを学校教育の中で否定してきました。「悪いことをしなければいい」と、ただ与えられるのを待っているだけです。そういう日本人特有の無責任さが実は最大の問題で、何もやらないということは良くないのです。途上国へ行っていいなと思うことは、彼らは生きることに肯定的なのです。犯罪はともかくとして、人間は生きていくためには何をやってもいいという生命力が必要なのです。私が途上国へ行って元気になる理由はそこにあります。

中西 福島第一原発問題では、田中先生の発言がいちばん信頼されていますね。初めて社会運動に関わったのはいつ頃ですか。

田中 チェルノブイリの事故直後に子どもが生まれて、体の具合が良くないことに気づいたのです。「まさか」と思って調べてみたら日本にも微量の放射性物質が降ってきて、その影響を受けていたのです。

妊娠中はカルシウムが不足するので妻に牛乳を飲ませていたものですから「きちんと調べずに牛乳を飲ませたことが問題だ。自分の責任を果たしていなかった」と。それから環境問題の世界に入ったのです。

中西 そういう貴重な体験に基づいていたのですね。

田中 私の話を聞いてくれた人が「それくらいの問題だったら解決できそうだ」と軽く腰を上げて行動してくれるのがいちばん嬉しいですね。

中西 そう重くとらえないで、「よし! みんなで一緒にやろう!」という感じですね。

田中 そうそう。私は茶化すということを重要に考えているのですよ。眉間にシワ寄せて重い話を真面目にやっても長続きしませんから。多少不謹慎でも楽しくやって長続きさせることが大切です。

中西 どの分野にも解決しなければならない問題がたくさんあります。これからは日本人も一人ひとりが自覚し行動を起こすときですね。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

(合掌)

「いやしの村だより」2012年3月号掲載

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