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向島和詞氏×中西研二 『畑と対話できる関係に…「生命の味わいがする深い一杯」と真剣に向き合う』

いやしの村でもファンの多い向島園のお茶。その若き二代目園主、向島和詞さんにお話をうかがいました。原発事故は、一年がたった今も茶業だけでなく日本の農業全体に深い傷跡を残していますが、それを「ターニングポイント」と前向きに捉え、自然と向き合う農業を目指されています。そこに日本のこれからの農業の新しいエネルギーを強く感じました。

畑と対話できる関係に…「生命の味わいがする深い一杯」と真剣に向き合う

向島和詞氏×中西研二

向島和詞(むこうじま・かずと)●1985年生まれ。有機栽培に取り組んだ先代の故向島園園主・向島和光氏亡きあと19歳という若さで園主を引き継ぐ。
現在、社名を「葉っピイ向島園株式会社」に変え、代表取締役兼園主として全国最年少の青年農業士に認定される。自然界の生命の輪を意識した完全有機農業に取り組みながら、各種有機認定を取得。農工商連携にも取り組み、低迷する茶業界の中で奮闘する新進気鋭の青年農業士。
2008年:JAS有機認定取得
2009年:NOP米国国家有機計画認証
ECOCERTエコサート認証
2010年:青年農業士に認定
「葉っピイ向島園 HP」http://www.mukoujimaen.jp/
「葉っピイメッセージ」http://blogs.yahoo.co.jp/muko0930/

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。ヒーラー。ワンネストレーナー。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来18年間で20万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。

風評被害にも打ち勝つ魅力ある農業に

手書きのチラシが好評!
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中西 昨年は、お茶の一番大事な時期に原発事故がありました。今年は、検出結果も良好だということで向島園さんのファンである私はすごく嬉しいのですが、茶業全体はどうなのでしょうか?

向島 除染作業として、すべての葉を深く刈り込むということをしています。お茶の木は葉の部分に栄養素などを蓄えておくので、そこを取り払えばお茶が吸収した放射能も除去されます。茶業全体でその除染作業をしたので、放射能測定値は震災前と何も変わらない状態に戻りました。ただ風評被害が根強いですから、状況は過去最悪かもしれません。

中西 放射能が検出されなくても不買状況がずっと続いているわけですね。

向島 ただ農業全体に言えることかもしれませんが、風評被害を吹き飛ばすほどの魅力ある商品を作れないということが浮き彫りになったのだと思います。いままでの農業は僕から見ると「農業」ではなく「工業」なんですね。化学肥料を撒ま くことは否定しません。ちゃんと木の状況を見て必要であれば使えばいいと思いますが、ただ決まった時期に農協などの指導のもと、化学肥料を撒くという想いのこもっていない作業から生まれる作物は、工業生産品と変わらないですよ。本当の農業というのは、自然と会話しながらやっていくものだと思います。そういうバックグランドがない商品は魅力もないし、風評被害にも弱いですね。あとは価格競争しかありませんから。

中西 風評被害だけでなく、これからTPPなどで外国から安い商品が入ってきたら、農家にとっては死活問題になります。このことは日本の農業全体に言えることですよね。

向島 そうです。TPPもただ反対するだけでなく、外国の安い商品が出回っても、国内の消費者が買い支えてくれるような魅力ある農産物を作らないといけないですね。

中西 本当にその通りですね。何が起きようが自分の農業は受け入れられるという自信のある商品を持っていたら恐れることはないですね。逆に工業生産型の農業は大打撃を受けると思いますが。

向島 同じことが農家の担い手がいないという問題にもいえます。工業生産化している農業には、作り手と商品の間に心が通っていませんから、仕事に何の輝きも感じられないんですね。魅力を感じないから、後継者がいなくなるのは当然のことです。

中西 確かに今の時代、ただ作っていればいいとしている農業はどんどん淘汰されてしまっていますね。逆に、独自の理念で深く農業に携わっているところは拡大していっています。そういう意味で農業も二極化しているのを感じますね。

 

畑がグレる?畑と心を通わして…

中西 私は向島園さんとは先代からお付き合いがありますが、ますます発展されていたその矢先の原発事故で心配していました。でもそれを前向きに捉えていることがわかって大変うれしいです。

向島 僕自身、今回の放射能問題がターニングポイントになりました。これからの時代は本物しか必要ないということを強く思うようになりました。具体的には、もっと時間をかけて自然と対話しながら農業をするということです。生産面積を縮小してでも自分ですべての畑を見回りたいですね。そうでないと、逆に自分のストレスになるのがわかったのです。

震災前はオーガニックに対する世間の注目などから売上が伸びていたのでそれに応えたい気持ちがあったり、また、父の無農薬のお茶に対する情熱が売上とつながらない苦しみを知っていたので、周囲に「父がしていたことは間違っていなかったんだ」ということをアピールしたい…という気持ちがありました。それらの思いから生産面積を増やし、売上を伸ばしてきました。だけどどうもその気持ちに葛藤があって、やっていることは無農薬栽培で変わらないのですが心がときめかなくなったのです。その矢先の原発事故で、そのこと自体はいいことではないのですが、この一件で自分の中の雑念のようなものが落ちていって実にシンプルになれたのです。要するに、自分は経営者ではなく農家でありたいという気持ちです。だから本当に自分の手の届く範囲で、畑と対話しながらやりたいと、改めて思いました。

中西 それは素晴らしい。結果として、本当の意味で消費者との信頼関係が深まることになりますね。

向島 それしか自分の目指す農業は実現しないと思うようになりました。ただ美味しいだけじゃない、「生命の味わいがする深い一杯」という父が目指していたお茶作りの真髄に真剣に向き合っていくしかないのです。昔の人は「畑は人の足で育つ」と言っていたようです。バタバタと心ここにあらずで仕事しているとグレるんですよ、畑が…。

中西 えー? 畑がグレる?

向島 本当に雰囲気が全然変わるんですよ。

中西 畑がグレるという話は面白いですね。自然全体に意識があるからそういうことはあると思いますが、それを感じ取れる関係になれるとはすごいことですよね。

向島 自然と向き合い共存することで、自分自身も楽しく農業ができると思うのです。実際、肥料や栽培方法など技術的にはいろいろありますが、何より一番の肥料は畑に顔を見せることなんですよ。特にこれからは科学とは違う心の農業が大事になると思います。つまり人間の頭で考えるよりも、自然に教えてもらいながらやるということです。すでに世界的に異常気象が起きていますが、そうなってくると今までの科学の常識では太刀打ちできません。有機農法にしろ非有機農法にしろ、理論は違っていても科学的データに基づいて作り上げられたものですから、それでは安定したものを作ることが難しくなってくると思います。もっと畑と対話できる関係を築いていくしかありません。

 

みんながハッピーになれる「葉っピイ向島園」に

古代品種で製造された新製品の「縄文の茶」と「SAKURA」
古代品種で製造された新製品の「縄文の茶」と「SAKURA」

中西 今回、すごい新商品が出ると聞いたのですが。

向島 古代品種で作っている「縄文のお茶」と、発酵させて作る「SAKURA」です。どちらもおかげさまで評判がいいです。

お茶はもともと種の状態で日本にやってきました。自家受粉しないため、その木と同じ品種のものを作るには挿し木で増やすしかありませんが、挿し木はクローンです。クローンだとどうしても生体が弱くなって…。でも日本のほとんどのお茶は藪北品種で、これはクローンで増えたものです。そこで日本古来の在来品種で作ってみたのが「縄文のお茶」です。

中西 名前にインパクトがありますね。名前の由来は何ですか?

向島 うちの茶畑から縄文式土器がいくつか発見されて博物館に展示されているんですね。縄文中期、約4000年前の祭祀具(地面につき立て繁栄を願ったと考えられる)のようです。もともとその場所は地元ではパワースポットだったようです。それで、その土地に眠る太古のパワーにあやかって日本の在来種の強さ、たくましさを表した「縄文のお茶」という名前にしました。加工の仕方もあえて昔ながらの浅蒸しで製造しています。

中西 へぇ! 縄文土器が発見されるなんてすごいね。「SAKURA」という名前も素敵ですね。

向島 父がこのお茶の味に魅了され、頼み込んで譲り受けた品種です。加工の段階で少し発酵させることにより桜餅のような香りがします。まったくの無添加で香りを出しています。

このお茶は、すべて父が独自で完成させた一本仕立てという強い茶木でできています。人間も窮屈な状態だとストレスを感じますが、木も同じで、間隔を空けてのびのびとさせてあげることにより自ら害虫の影響を受けない強い生命力を持った木になります。

中西 お茶本来の味わいを感じられるわけですね。お茶の効能もすごいのでしょう?

向島 お茶はもともと薬として扱われていただけに効能は数多くありますが、薬用のほかに、私はお茶が作る「場」の力を感じます。例えば食事や会議で出されるお茶はその場を和ませますね。お茶によって最初のコミュニケーションが生まれます。そういう「場」の雰囲気を好転させる力に魅力を感じます。また、日本では戦に赴く武将が生死ギリギリの精神状態を安定させるために一服立てたとか、スピリチュアルな要素もあります。

ところが最近、急須がない家がけっこうあって、お茶はペットボトルで飲むものだと思っている子どもが増えてきているようです。生産者として心を込めてお茶を作りますが、最終的にそれを美味しく味わっていただくのはお茶を淹いれるお客さん自身です。それでもっとお茶を身近に楽しんでもらおうと、お茶を楽しむワークショップを開催させていただいています。

中西 それは面白そうですね! ぜひ参加してみたいです。具体的にどんな内容なのですか?

向島 お茶の淹れ方や美味しく淹れるための理論的な説明、それから実際に自分でほうじ茶を炒って作ってみたりします。作る方にも味わっていただく方にもお茶を通して何かしらのハッピーを感じてもらいたいのです。私自身、自然と溶け込み、農業を通して生命を持った生き物としての自分を生きていると感じたときに、すごく幸せに感じるからです。

中西 素敵な考えだと思います。二代目の向島園主をますます応援していきたいと思います。

今日はお忙しい中ありがとうございました。

(合掌)

「いやしの村だより」2012年7月号掲載

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