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対談:井口浩氏&小野加瑞輝氏×中西研二 「みんなのエネルギーで新しいパラダイムへ」

シェアハウス、ネットワーク、モバイルタウンなど、既存の概念を覆す新しい都市像を次々に打ち出す「ミレニアムシティ」。
今までに世界中から受けた取材は100回以上。私たちの生活の基本となる「暮らし方」にパラダイムシフトを起こすエネルギー源が「楽しく前向きに」という意識であるのが何より新しい時代の風を感じました。


新しい時代の新しい暮らし方 ネットワークエコビレッジ
みんなのエネルギーで新しいパラダイムへ

井口浩氏&小野加瑞輝氏×中西研二

小野加瑞輝(おの・かずき)●特定非営利活動法人ミレニアムシティ理事長、株式会社エコライン代表取締役、一級建築士。建築設計や防災まちづくりを行うと共に、ミレニアムシティの活動を通じてエコビレッジづくりに取り組んでいる。
http://www.npo-mc.com/

井口 浩(いぐち・ひろし)●1984年明治大学院修士課程修了。松田平田設計、UG都市計画を経て、95年(株)井口浩フィフス・ワールド・アーキテクツを設立。2000年NPO法人ミレニアムシティ理事長。環境建築やエコビレッジの企画・設計・推進・運営を行っている。2008年度JIA新人賞等。2012〜日本大学藝術学部非常勤講師。

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。ヒーラー。ワンネストレーナー。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来19年間で20万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。2012年2月には、日本人のワンネスメディテーター6名のうちの一人に選ばれ、以降ますます精力的に活動している。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。

人の繋がりで大きくなる未来都市の実現

中西 お二人の運営されているミレニアムシティとはどんなシステムですか?

井口 一言でいったら理想のまちづくりです。この活動はNPO法人の形をとっていて完全ボランティアなのですが、98年から足掛け14年続けています。住民が自分たちの理想的な都市環境を作りながら住んでいくことを目指し、具体的には「ネットワークエコビレッジ」という形をとっています。

中西 新しい言葉ですね。

井口 私たちが作った造語です。エコビレッジというのはエネルギーと食料を自給自足、または半自給自足でまかない、持続可能な社会を作っていこうとする活動ですが、もっと時代に即したことはできないかと生まれたのが「ネットワークエコビレッジ」です。一カ所だけで完結するのではなく、何カ所もあるエコビレッジを互いにネットワークで結びます。若者たちが山や海、農業や牧場などを楽しみながらネットワークで結び、それ自体が緩やかなコミュニティを作り、年を取ったらそのまま老人たちの癒しの村になる…そんな都市像です。

小野 このネットワーク構想は設立当初からありましたが、3・11の震災以降、このシステムが一カ所に定住するよりも防災的に複数必要だと考えるようになったのです。つまり「自立分散型ネットワーク」で、一つ一つは独立しながらも、お互いがコミュニティとして広がっていく都市像です。

井口 一カ所が災害などで使用できなくなっても自給自足でエネルギーと食料をまかなっていれば容易に移動もできますし、コミュニティで繋がっていれば後から入ってもよそ者扱いされないですみます。コミュニティの分断というのは福島でも深刻な問題になっていますからね。

小野 ミレニアムシティとは、人と人の繋がりからどんどん大きくなる新しい未来の都市像を意味しています。

 

お金を使わない都市夢を実現する都市

中西 発想がユニークで、さらにそれを具体的に実現しているのが大変素晴らしいですね。施設は今どちらにありますか?

井口 2003年に「くりもとミレニアムシティ」、2010年に「あさひミレニアムシティ」が共に千葉県にできました。いまは「吉祥寺ミレニアムシティ」を立ち上げているところです。

小野 「くりもとミレニアムシティ」の施設はガラス張りの温室の中に、共有スペースと、ベッド1台分くらいの個人のCOYAがあるだけです。どこまで共有部分にできるかプライベイトスペースをそぎ落としていったら、残ったのは寝るところだけになりました(笑)。

井口 エコ建築としても優れているんですよ。周りに生い茂っている木は落葉樹なので、冬は葉が落ちて太陽が差し込み、夏は葉が茂り日陰を作ります。たったそれだけのシステムですが、お金をかけず、自然といかに寄り添うかということがエコであると実感できると思います。

それから「お金に使われない」ということがミレニアムシティの大きな特徴となっています。お金は使うけどお金に使われない。「目指せ年収100万以下!」と言っているんですよ(笑)。年収を高く望んで幸せになるどころか、多くの人がいろいろなことに縛られるようになって不幸せになっているじゃないですか。だからお金に使われない生活がどういうものなのか試しています。そのために「ミレ」というコミュニティ通貨を作りました。

中西 地域通貨のことですね。

井口 そうです。アースディマネーと提携することで渋谷を中心に約300店舗で実際に使用できます。最大4割引きほどでランチが食べられますよ。

中西 お金に使われない生き方というのは大変共感しますね。シェアハウスの魅力として、人との繋がりのほか、経済的にも負担が少なくなりますが、ほかにシェアハウスの効果はありますか?

小野 ミレニアムシティではさまざまなワークショップを開催していますが、毎回「夢と未来を語る会」をやっています。そこで語る夢がけっこう実現しているのです。

中西 例えばどんな夢が実現しましたか?

小野 当時はアマチュアのカメラマンだった人が「写真集の出版」と「ニューヨークで個展」という夢が叶ったり、ミレニアムシティが東大の教科書に載るという夢が実現しました。

井口 要するにバックキャスティングということをしていたんですね。未来を設定して今何をするか決めることなんです。

自分の夢を口に出していると、だんだん実現できる気になってくるのが不思議です。そういうふうに夢を語る場所があるということが重要ですね。どこでも自分の夢を公表できるわけではないですから。私たちのルールは一つだけ。「人の夢を否定しないこと」、それだけです。

中西 それは大変重要なルールですね。

 

将来は、移動型都市の実現へ

中西 ミレニアムシティの目的にパラダイムシフトを掲げていますが、具体的にどのような意識変革が必要だと思いますか?

井口 いま一番目覚しいパラダイムシフトは去年の原発事故からです。事故後、福島に行きました。畑も自然も豊かで非常に美しい景色なのですが、ゴーストタウンになっています。今までは災害にいかに強く頑丈な建物を作るかが重要でしたが、放射能汚染というのはそもそものパラダイムが根本的に異なります。今までの防災の観念が通用しないのです。そこで、建物だけじゃなく町も移動するモバイルタウンを考えました。

具体的には新たなトレーラーハウスです。路上に停めておくと劣化もひどいし、世間からの目も冷たくなりそうなので(笑)、施設の中に入れておきます。施設は固定して、中の家だけ移動する“やどかり”のイメージです。

最初はみんなびっくりすると思いますが、パラダイムシフトを起こすには時間がかかります。建築は基礎(土台)があってそこに建物を建てるという概念ですが、我々がやろうとすることは知恵を出し合う(シェアする)ことで、建築基準法等の法や規則はそのままでも十分に成立可能な解決策とするのがポイントです。これを10年続ければ一つのモデルになると思います。

 

逆定年制で、お年寄りと昔の商店街を…

対談を終えて
対談を終えて

中西 日本の地震はこれからも起きますし、富士山の噴火もいつ起きるか分からない状況で、トレーラーハウスは現実的な話だと思います。

井口 我々もただ反対運動をするよりも、起きた問題に現実的に対応していきたいと思っています。集まった人たちのエネルギーを集中的に使おうとしたら解決策のモデル提示に向かっていました。反対も大事な意思表明ですが、みんなで解決策にエネルギーを注いでいれば楽しいし、中西さんの「ありがとう、ごめんなさい…」の4つの言葉を使っていると自然にそういう方向に向かいますね。あれは本当に素晴らしい言葉ですよ。

中西 日本の高齢者問題も深刻化していますが、ミレニアムシティではどのような対応をお考えですか?

小野 高齢者施設に入居されているお年寄りのほとんどはお元気です。だから私が大船渡の社会福祉法人に関わった計画では、お年寄りが働ける場所を作ろうと考えました。「逆」定年制で、65歳以上でないと働けないのです。

中西 逆定年制ってすごくいい!

小野 大船渡に震災後、屋台村が出来たのですがそこに86歳で生まれて初めて居酒屋を始めたおばあちゃんがいます。この計画はこれがヒントになっています。居酒屋を始めるようになってからおばあちゃんは生き生きするし、仲間のおばあちゃんが仕事を手伝うようになって、雇用の場が生まれるし、いい連鎖が生まれています。

昔の日本ではちょっと歩くと豆腐屋や八百屋があったように、品数は少ないけどちょっとしたものは買えるよう、自宅の軒先でおばあちゃんにお店を開いてもらうのです。

中西 それはいいですね。人間関係も生まれるし、そういった構造ができることがわかって嬉しいですね。

井口 そういうシステムをどんどん取り入れてこれからも進化させていきたいと思っています。

中西 震災で一度壊れたことによって今まで埋もれていた問題が表面化し、新しいパラダイムシフトが起きているのかもしれませんね。今日は未来的な夢のあるお話をありがとうございました。

(合掌)

「いやしの村だより」2012年12月号掲載

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