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対談:渋谷正信氏×中西研二「対立することでなく、調和で海を守る」

「渋谷にできない仕事は諦めるしかない」と言わしめるほど、業界で信頼の厚い海中工事の第一人者。そのプロフェッショナルな姿勢は、各種メディアにも取り上げられています。

文明の発達と環境保全。2つの相いれない課題を調和させることに取り組んでいる渋谷氏は、「海が好きで、好きで」と柔らかい笑顔で語ります。

対立することでなく、調和で海を守る

対談:渋谷正信氏×中西研二

渋谷正信(しぶや・まさのぶ)●1949年北海道生まれ。海洋開発技術学校、深海潜水科卒業。以後、世界中の海に潜水し、潜水時間3万時間以上。水中工事の第一人者。野生のイルカと泳ぐドルフィンスイマーの第一人者でもある。海と調和するものづくり、潜水士の育成だけでなく、磯の藻の再生、心と身体を癒す水中セミナーにも尽力。「東北の海を震災以前より以上に再生する」のも新たなテーマに。
http://www.shibuya-diving.co.jp/

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来24年間で21万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。2012年2月には、日本人のワンネスメディテーター6名(現在は8名)のうちの一人に選ばれ、以降ますます精力的に活動している。
長年のヒーリング活動が評価され、2015年に『東久邇宮記念賞』を、同年『東久邇宮文化褒賞』を受賞
著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。

強いダイバーから、弱さを知るダイバーへ

中西 潜水士というととても強い男性のイメージですが、お会いしてみると本当に柔和で穏やかな方ですね。

渋谷 水のおかげですね。仕事を始めた頃は、ダイバーというのは強くあらねばならないと思っていたし、海は金儲けのためでした。それがだんだん癒しのためというふうに変わってきたからではないでしょうか。

中西 なにかきっかけがあったのですか?

渋谷 右腕だと信じていた人に会社を乗っ取られ、何カ月も家から出られないほど精神的にダメージを受けました。でもその裏切りにより、いままで自分が思っていた「強い自分」像が崩壊して、実は弱い人間だったということに初めて気づいたのです。それから、今までまったく興味のなかった瞑想をするようになり、精神世界に足を踏み入れるようになってきたのです。

中西 仕事の仕方も変わってきましたか?

渋谷 ものの見方、考え方がガラリと変わりました。仕事で磯をダイナマイトで吹き飛ばしていると、自分の仕事は環境を直接壊していると強く感じるようになりました。それから環境問題に取り組むようになったのです。

中西 それで海の環境と調和する海中工事の仕組みが生まれたのですね。

渋谷正信氏著書(右)『イルカに学ぶ癒しのコツ』(左)『海のいのちを守る:プロ潜水士の夢』
渋谷正信氏著書
(右)『イルカに学ぶ癒しのコツ』
(左)『海のいのちを守る:プロ潜水士の夢』

渋谷 そうですね。工事をしているとき、杭の周りにたくさん魚が寄ってくるんですよ。それを見たとき、構造物の作り方を変えれば魚の巣にもなり、構造物としての機能も備えることができると思ったのです。独自に調査・研究していくうちに専門家の目に留まり、国際会議の場で大きな反響をいただきました。いまではそのやり方を専門にやっています。

でも最初の頃は、そんな利益の出ないことに熱心になっている私を見て、「水の中のことなんか誰にもわからないんだから」と、同業者にさんざん言われました。

そのうち時代の流れも環境を大事にする風潮になってきて、環境を無視した仕事には注文がこなくなりました。環境を無視できなくなったのは建設会社だけでなく、お役所もそうです。社会の目が厳しくなっていますから、そういう姿勢のある業者を使いたがるのです。

中西 時代が渋谷さんに追いついてきたということでしょうね。

渋谷さんに頼めば海の環境を守った状態で作ってくれるという信頼がある。そうやって渋谷さんの信念は、建設したい側からも、海の環境を守りたい側からも理解されます。ワンネスですよね。

 

イルカに教わった、力を抜く感覚

中西 野生のイルカと泳ぐドルフィンスイマーとしても有名ですね。一般向けのセミナーも開催されているとのことですが。

渋谷 そうなんです。でも最初は「イルカ」と「癒し」というのが自分の中でまったく結びつきませんでした。私が潜水学校で教わったイルカというものは、調教とか、ただのビジネスツールでしかなかったので、「イルカが癒す」という言葉にとても衝撃を受けました。

その頃はすでに癒しとか瞑想の感覚もわかっていたので、それがイルカとどう結びつくか、どうしても体験してみたくて、世界中の海を泳ぎました。

でもどうしても癒しまで体験できず、諦めかけていたときに、伊豆諸島にある御蔵島に行ったのです。御蔵島はすごく野性味あふれる海で、そのときは黒潮も流れていました。イルカが2頭、黒潮の流れに乗って泳いでいたので、私も必死になって泳ぎました。でも泳ぎの限界があって、どうしても追いつけない。そのうちどうでもよくなりました。

ただ暖かい黒潮の流れに身を任せて、何も考えずに浮かんでいたら、2頭のイルカがピタッと私の両脇についたのです。そのとき見たイルカの目を思い出すといまでも鳥肌が立ちます。いままで見てきたイルカの目と全然違うのです。その目はすごく大きなエネルギーとなって、私の中に入ってきました。そして感謝の気持ちが沸き上がり、途端に涙があふれてきました。そこで初めてイルカと一体となり、癒されるという感覚を知ったのです。それからは、いままでの泳ぎとは違った、もっと楽になる泳ぎに変えるようになりました。

中西 ガンガン泳ぐのではなく、流れに身を任せる泳ぎに変えたわけですね。

渋谷 そうです。肉体の力を抜くことでスピリチュアルな力が湧き出るのですね。それで水と一つになるという感覚をつかむようになって、イルカと泳がなくても水から癒しを感じるようになりました。水中セミナーではそういう力を抜く泳ぎを教えています。本当に癒しが必要な人は元気に泳げませんから、誰でもできる泳ぎで癒しを体験できるようにしたいのです。目指すところは、自分が泳いでいたら自然にイルカが一緒に泳いでいたというような感覚です。

 

未来の地球のために、「海の森づくり」を

中西 日本の海の環境は、渋谷さんから見てどうですか?

渋谷 特に南の海が、相当ダメージが大きいのですが、日本の4割くらいの海から海藻がなくなっていっています。「磯焼け」という現象なんですが、海の砂漠化なんです。水産の面からみると海藻はすごく重要で、海藻があるからそこが餌場になって魚が集まるのです。だから磯焼けするということは魚がいなくなるということなんです。

中西 原因はなんですか?

渋谷 一つには温暖化の影響ですね。完全に生態系が変わっています。だからいま「海の森づくり」といって、温暖化に見合った海藻を植えることで環境を変えていく取り組みをして、少しずつ効果が出てきています。これがもっと増えていけば海藻も陸上の植物と同じように炭酸ガスを吸収するので、温暖化も抑えていくようになってくると思います。いまは悪循環になっている状況なのです。

中西 人間が作り出す以上に温暖化の問題が進んできているんですね。

福島の放射能汚染については何か関わっているのですか?

渋谷 洋上風力などの海洋再生エネルギーの最先端の仕事を通して関わっています。放射能汚染についても大きな問題ですが、まずエネルギー問題を解決していかないと根本的な解決なりません。だから代替エネルギーをしっかり根付かせるというアプローチでやっています。

中西 渋谷さんのような方に、将来にわたる地球の環境問題に取り組んでいってもらいたいです。

本当に素晴らしい仕事ばかりされていますね。

渋谷 仕事を始めた数年間は、ヘドロの中をはいつくばって仕事をしていましたよ。

転機になったのは、やはり自分の精神的な変化でした。利益が出ないと言われながら環境問題に取り組んでいくうちに、会社も上向きになってきたのです。でも強いダイバーを目指して入ってきた人は、みんな辞めてしまいました。

中西 何かを得ようとしたら何かを失うんですよね。それも大事なことです。

渋谷さんでないと語れない話ばかりでした。ワンネスを実践されている方ですよね。お忙しい中ありがとうございました。

(合掌)

 

「いやしの村だより」2016年8月号掲載

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